海外送金に関してよく見かける「SWIFT」とは、何か?
分かっているようで意外と分かりづらいSWIFTについてあらためて紹介したいと思います。
「SWIFT」とは、”Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication”の略称で、日本では国際銀行間通信協会と呼ばれており、世界各国の金融機関の送金に関するメッセージの通信サービスを提供する、ベルギーに本拠を置く非営利組織です。
注)「SWIFT」が示す内容には複数の意味で使われており、主に次に挙げるものが。
・通信ネットワークシステム
・非営利組織この記事で説明する、SWIFTとは、「通信ネットワークシステム」のことを指し、組織について触れる際は「非営利組織のSWIFT」と記載します。
なお下記はSWIFT公式HPでのSWIFTの説明です。
『SWIFTは加盟者が所有するグローバルな協同組合で、高度に安全化された金融メッセージングサービスを提供する金融業界の標準化団体です。』
この説明だけではよくわからないですよね…
それでは、SWIFTを用いた海外送金のしくみについて説明していきます。
SWIFTを用いた海外送金のしくみ
国内送金の実態
国内送金をする場合、中央銀行の日銀を介して送金が行われているのですが、実は実際にお金の移動があるわけではなく、例えば、佐藤さんが鈴木さんに100万円送金する手続きをした場合、中央銀行の日銀へ「佐藤さんの銀行口座から鈴木さんの銀行口座へ100万円送金」というメッセージが送られます。
その後、日銀が佐藤さんの銀行口座から鈴木さんの銀行口座へ資金の移動を行うのです。
つまり、銀行間で実際にお金を移動させているのではなく、中央銀行の日銀が移動を行なっているのです。
しかし、国際送金の場合、国内でいう日銀の役割を果たす中央銀行が存在しません。
そのため国際送金では、金融機関同士で資金を移動させる必要があります。
(※銀行間で契約を結び、お互いの口座を開設した”コルレス銀行”と呼ばれる、決済代行銀行を経由して資金の移動が行われます。)
SWIFTの仕組み
コルレス銀行とSWIFTを活用した、海外送金について見ていきましょう。
今回の例では、佐藤さんのA銀行から、ベルギーのケヴィンさんのZ銀行に、海外送金をするケースを図解します。
イメージ図にあるように、SWIFTとコルレス銀行を活用した国際送金では下記のように送金が行われます。
①A銀行からコルレス銀行Cへ「◯円送金」というメッセージを送信
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②コルレス銀行Cがコルレス銀行Dのノストロ口座に日本円を入金。コルレス銀行DにSWIFTメッセージを送信
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③コルレス銀行Dがコルレス銀行Cのノストロ口座からユーロを出金。
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④コルレス銀行DがZ銀行に「ユーロ送金」というメッセージを送り、Z銀行がケヴィンさんの口座に資金の振替を行う
以上がSWIFTを活用した国際送金の流れになります。
上の図を見てお気づきになられた読者の方もいるかもしれませんが、経由する銀行が増えるほど、手数料や時間が多くかかり、利用者にとって不便なものとなってしまうのです。
それでは次に、SWIFTの課題や対策としての仮想通貨についてご紹介します。
SWIFTが抱える2つの課題とは
SWIFTの課題としてあげられるのは下記の2つです。
⑴送金に時間がかかる
⑵手数料が高い
SWIFTの課題⑴ 送金に時間がかかる
SWIFTの課題として送金に1~4日ほど時間がかかってしまうことが挙げられます。
なぜSWIFTでの送金に時間がかかる理由として、コルレス銀行などの仲介業者がいるためです。
仲介業者が複数存在するため、送金情報の確認や伝達に時間がかかってしまいます。
SWIFTの課題⑵手数料が高い
SWIFTの2つめの課題として挙げられるのは仲介業者が存在するために発生する手数料の高さです。
国内でも異なる銀行間での送金には送金手数料がかかりますよね。
SWIFTを活用した送金では、コルレス銀行などの仲介業者が存在するため手数料も高くなってしまいます。
実際筆者がSWIFTを活用した送金をした際には、約2,000円ほどの手数料が発生してしまいました。
《注》
課題の1つとして、SWIFTでは送金状況が不透明という点を指摘することがありますが、下記のような情報もあることからこの記事では、とりあげていません。
参考:FX PLUS_SWIFT 海外送金状況がリアルタイムで確認可能な追跡サービスを開始
この章では、SWIFTが抱える課題をご紹介しました。
最後にSWIFTの課題解決を図る「リップル」についてご紹介します。
SWIFTの課題を解決するリップルとは?
リップルとはRipple.Incが開発した送金システムのことで、そこで使用される仮想通貨が「XRP」です。
SWIFTを活用した国際送金では、仲介業者が存在するため手数料や時間がかかってしまうのでしたね。
そこで、リップルでは次に挙げる3つの製品を活用することで、仲介業者を介さない国際送金の実現を目指しているのです。
①xCurrent(エックスカレント):送金した内容がリアルタイムで確認できるようになる。
②xRapid(エックスラピッド):XRPを活用し、迅速で低コストな送金が実現する
③xVia(エックスヴィア):リップルを使う企業や送金者、銀行が使いやすくわかりやすい画面を提供
実際、xRapidを活用した事例では、アメリカ〜メキシコ間の国際送金が2分で完了し、コストが40〜70%削減できたと発表されています。(First Pilot Results for xRapid)
終わりに…SWIFTとリップルの今後の競争はどうなる?
いかがでしたでしょうか。SWIFTの概要や課題は理解していただけたでしょうか。
最後の章ではSWIFTの課題を解決するリップルについてご紹介しましたが、SWIFTの課題を解決する動きが見られるのです。
実は、SWIFTでは年に一度”Sibos”という会議が開かれるのですが、その会議で「SWIFT gpi」というプロジェクトが発表されました。
プロジェクトの概要は、「24時間以内の国際送金完了」「手数料が開示できるようにする」「送金が追跡できる機能の提供」などです。
リップルが従来の送金システムに革命を起こそうとする一方で、SWIFTも既存のシステムのアップグレードが進んでいます。
両者の競争が今後どういう展開を見せるのか、注目していきたいと思います。