
今年も確定申告の時期がやってきましたね。
確定申告の期間は2月16日~3月15日、街を歩いていても自然と目に入ってきますね。
サラリーマンでも、仮想通貨の利益を含めて年間20万円以上の雑所得のある人は、確定申告が必要なのをご存知でしょうか?
今回は、仮想通貨の利益と確定申告の考え方、税金の計算の仕方についてご一緒に見てみましょう。
1. 仮想通貨の利益の出るケース
仮想通貨の税法はまだ新しく、2017年4月に改正資金決済法で、仮想通貨が通貨として認められ、仮想通貨取引による利益は『雑所得』に分類されました。
仮想通貨で利益が出たと見なされる場合として、
- 仮想通貨を円に換金する場合
- 仮想通貨で他の仮想通貨を購入した場合
- 仮想通貨で商品を購入した場合
があります。
仮想通貨を他の通貨と交換したり、商品を購入したりした時点で、その価値が購入時より値上がりしている場合、差額分が仮想通貨に関する利益となります。
株を売った時に、その株価が値上がりしていたら、値上がり分が利益として課税されるのと同じ考え方です。
ただし、仮想通貨を持っているだけでは、その価値が値上がりしていても課税されることはありません。
さらには…
仮想通貨の「マイニング」で報酬として仮想通貨を取得した場合も課税対象となります。
事業所得又は雑所得になります。
その場合、仮想通貨を取得した時点の時価から、必要経費を差し引いたものが所得金額となります。
2. 仮想通貨で利益が出たときの確定申告の考え方
日本国籍で所得のある人は、国に税金を収めなければなりません。
所得税は、国家機関の運用のために必要な資金、家庭でいえば生活費になりますので、国民として納税義務を回避することはできません。
所得税の分類は、非常に複雑で、仮想通貨の利益は「雑所得」に分類されています。
それでは、所得税の分類についてみてみましょう。
【所得税の分類】
商業・農業・漁業で得た所得は事業所得です。
しかし、不動産の地代などは不動産所得、山林の伐採は山林所得になります。
また、サラリーマンの給与は給与所得、退職金は退職所得、生命保険の受取りは一時所得、土地・建物・ゴルフ会員権・美術品などの販売は譲渡所得となります。
ここまでの分類はかなり明確ですが、これ以降が非常に複雑です。
財テクの株や投資信託の利益は配当所得ですが、預貯金や公社債の利子、公社債投資信託の収益分配は利子所得です。
そして、上記以外が全て雑所得となります。
【雑所得としての仮想通貨の利益】
赤字大国の政府は2017年の仮想通貨バブル時に、仮想通貨の税法を定め、仮想通貨を雑所得に分類しました。
雑所得は、給与所得と合算し、総合課税で累進課税の税率で納税することになっています。そのため、分離課税ではなく、損益通算できないなどのデメリットがあります。
仮想通貨の価格は、2017年に高騰し翌年暴落したように、価格変動が非常に激しいと言う特徴があります。
しかし、残念ながら株の配当所得のように、その年の損失を、確定申告で翌年の利益と相殺(損益通算)することができません。
また、株や公社債投信のように一律の分離課税の制度がなく、累進課税で課税されるため、大きな利益をあげればそれだけ収める税金も高くなります。
仮想通貨については政府内でも様々な意見があるようで、今後、法律が変更される可能性もあります。
金融庁のサイトは常に確認しておいた方が良いでしょう。
ー> 金融庁公式サイト
それでは、雑所得と総合課税についてみてみましょう。
【雑所得と総合課税】
仮想通貨の取引で得た利益は、雑所得として年収にプラスして確定申告をしなければ脱税となってしまいます。
そのため、自分に納税義務が発生しているかどうかの確認が必要です。
雑所得の「総合課税」では、ご自身の給与所得の年収に、仮想通貨で得た利益の額を足し、本業の収入と総合して「累進課税の税率」で税額を計算します。
累進課税とは、「所得の多い人により多く納税してもらう」課税システムで、年収900万を超える人は収入の33%、1,800万を超える人は40%、4,000万を超える人は所得の45%の税金を支払うことになります。
また、330万以下ならば10%の税率ですが、それを超えると税率は20%に上がり、900万以下ならば23%であるところ、それを超えると33%になるなど、仮想通貨で得た利益を合算することで、税率が急に上がることがあります。
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
参考資料:国税庁「No.2260 所得税の税率」
【損失の取扱い】
前述の通り、仮想通貨の取引により損失が生じても、雑所得以外の他の所得(給与所得)と損益通算することはできません。
【仮想通貨の証拠金取引】
仮想通貨でも、10万円の証拠金で100万円の取引ができる、レバレッジ取引があります。しかし、仮想通貨の証拠金取引による所得は、総合課税で申告するため、外国為替証拠金取引(FX)の特例の申告分離課税の適用がありません。
【仮想通貨の分裂(分岐)】
所得税法では、経済的価値のあるものを取得した場合は、取得時の時価に基づいて所得額を計算することになっています。
仮想通貨の分裂(分岐)に伴い仮想通貨を取得した場合、分裂時点の価額は0円であるため、価値を有していないと見なされます。
新たに取得した通貨を、売却又は使用した時に利益が出た場合に、所得が生じたとみなされます。
【仮想通貨と事業所得】
仮想通貨を事業として取引すれば事業所得になります。
事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段に使用した場合の損益は事業所得とみなされ、損益通算できます。
また、仮想通貨取引の収入によって生計を立てていることが、客観的に明らかである場合も事業所得とみなされます。
株のトレーダーのように、仮想通貨取引に事業と言えるほどの時間と労力を費やし、生活を維持できる以上の収入をあげているかどうかなどが判断基準です。
しかし、サラリーマンとして通常の業務をこなしている人は、ほぼ100%事業所得と認められることはないようです。
3.仮想通貨の納税義務者とは?
それでは、仮想通貨で納税義務のある人とは、どのような人でしょうか?
国税庁の『確定申告の必要な方』では、「給与を1か所から受けていて、その給与が源泉徴収の対象となっている場合、給与所得などを除く所得の合計額が20万円を超える人」となっています。
参考: 国税庁
つまり、給与所得のある人で、仮想通貨で得た利益が、他の雑所得と合わせて20万円を超える場合は納税義務があり、確定申告が必要になります。
主婦や学生で扶養家族になっている人は、33万円以上となります。
これは、仮想通貨の利益だけでなく、例えば執筆やアフィリエイトで得た報酬などの雑所得を合算して、1年間で20万円を超える場合です。
雑所得とは、事業としての要件を満たさない副業や副収入を言います。
具体的には、原稿料、印税、講演料、個人的な家庭教師、レッスンの謝礼、インターネットのアフィリエイトやオークションの収入、FXの外国為替差益、税金の還付加算金、国民年金、個人年金、個人的金銭の貸付け利息etc.が雑所得に分類されます。
しかし、懸賞金などの偶発的な収入は一時所得に、家庭教師でも派遣会社と勤務契約を交わしていれば給与所得になります。
【申告納税制度と納税義務】
日本は申告納税制度で、利益を得た人は自分で納税額を計算し、確定申告で納付しなければなりません。
複数の仮想通貨交換所で売買していると、仮想通貨の利益計算は非常に複雑になってきます。
現在、仮想通貨専門の税理士も少なく、依頼料も高額です。そのため「利益を申告しなくてもバレないだろう」と無申告のままやり過ごす人も多いのではないでしょうか。しかし、税務署は、個人の仮想通貨の利益を容易に把握することができます。
現在、仮想通貨交換所は金融庁の登録制になっており、金融庁の指示で仮想通貨交換所は、登録が抹消されないために取引内容を全て提出しています。
税務署はマイナンバーで、大きな利益を上げているにもかかわらず確定申告していない人を特定することができます。
また、仮想通貨のブロックチェーンはオープンな台帳で、取引内容が公開されておりいつでも過去に遡って、全ての資金の流れを確認することができます。
そのため、大きな利益を上げても税務署から連絡がこない場合は、泳がされているだけと考えるのが良いでしょう。
【延滞税・加算税・処罰】
確定申告を怠り、脱税と見なされた場合には、延滞税・加算税・処罰などの罰則があります。
納税が遅延した場合は、納めるべき税額に対して、納期から起算して7.3%~14.6%の延滞税が課されます。
税務署から脱税を指摘された場合の加算税には、「過少申告加算税」、「無申告加算税」、「不納付加算税」、「重加算税」などが課されます。
一番重い重加算税の税率は、納めるべき税額の35%~40%追加税となります。
処罰としては、所得税・法人税法に基づき、「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金」に処せられます。
4.税金計算の概要(国税庁HP)
平成30年11月に国税庁は、仮想通貨の申告利便向上のための対策を発表しています。
『仮想通貨取引に関する所得について「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」を開催し、正確な所得計算のための年間取引報告書などを、交換業者から顧客へ提供できるよう検討し・・・納税者が年間取引報告書の内容等に基づき入力することにより、申告に必要な所得金額等が自動計算される「仮想通貨の計算書」を国税庁ホームページで公開』すると発表しています。
公開資料をもとに、仮想通貨の法令を十分理解することが大切です。
2017年12月に発表された国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」を参考に、仮想通貨で利益が出た場合の計算の仕方についてみてみましょう。
① 法定通貨への換金
仮想通貨を売却した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額とみなされます。
保有する仮想通貨を日本円に換金した時の所得の計算方法
例えば、100円で10個買ったものうち5個が200円で売れた場合は、
購入単価が1個10円のものが単価40円で5個売れたので,
1個につき30円の値上がりがあったわけです。
利益は(40円-10円)X5=150円になります。
すなわち、売却価額から取得単価x個数を引いたものが利益となり、
200円-100/10×5=200-50=150円です。
仮想通貨の円への換金も同様に、例えば:
2,000,000円で4ビットコイン(BTC)を購入し、
0.2ビットコインを110,000円で売却した場合は、
下記の計算式のとおり、所得金額は10,000円です。
110,000 円 – (2,000,000 円÷4BTC)× 0.2 BTC = 10,000 円
【売却価額】- 取得単価】 ×【支払数】=【所得金額】
② 仮想通貨同士の交換
保有している仮想通貨で他の仮想通貨を買った場合、他の仮想通貨の購入価額と、決済に使う仮想通貨の取得時の価額との差を、利益と見なします。
購入価額とは、他の通貨を購入する時に支払う額を円に換算した金額をいいます。
仮想通貨で他の仮想通貨を購入した時の所得の計算方法
100円で10枚買った通貨の5枚で、200円相当の他の通貨を買ったならば、
購入単価が1枚10円の通貨を1枚40円として5枚使用したため、
1枚につき30円の値上がりがあったわけです。
利益は(40円-10円)X5=150円になります。
仮想通貨の購入で、いくら利益があったかを計算するので、例えば:
2,000,000円で4BTC購入していたなかから、600,000円相当の他の仮想通貨を購入するのに1 BTCを使用した場合の所得金額は、100,000円になります。
600,000円-(2,000,000円÷4BTC)×1BTC=100,000円
【仮想通貨の購入価額】-【決済通貨の取得単価】x【支払数】=【所得金額】
③ 仮想通貨で商品・サービスを購入
保有している仮想通貨で商品を購入した場合、商品価額(=その時点ての仮想通貨の価格)と、取得時の価額との差額か仮想通貨の利益と見なされます。
保有する仮想通貨で商品を購入した場合の所得の計算方法
例えば、100円で10枚買った通貨の5枚で、200円の商品を買った場合は、
購入単価が1枚10円の通貨を1枚40円として5枚使用したため、
1枚につき30円の値上がりがあったわけです。
利益は(40円-10円)X5=150円になります。
商品の購入で、いくら利益があったかを計算するので、例えば:
4 BTCを2,000,000円で購入し、155,000円の商品購入に0.3 BTCを支払った場合の所得金額は、5,000円になります。
155,000円-(2,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=5,000円
【商品価額】-【取得単価】×【支払数】=【所得金額】
追加購入の仮想通貨の取得価額の計算方法
同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の取得価額の算定方法には、移動平均法や総平均法があります。
実際に仮想通貨を運用していくときは、同じコインを何度も買ったり、その一部を売却したりします。同一の通貨を複数回売買した場合の「平均法」の考え方は下記のようになります。
例えば、
10万で5コイン購入(購入金額50万)し、
1コイン20万になったので、追加に3コイン購入(購入金額60万)、
その後1コイン30万になったので、5コインを売却(売却額150万)、
この場合は、1コインの購入時の平均取得単価を計算します。
[平均取得単価の計算式]
110万(購入総額) ÷ 8コイン(保有コイン数) = 13.75万円@
1コインの平均単価は「13.75万円」ですね。
所得金額は、売却額から購入時の平均単価の合計額を引いたものなので、
[所得金額の計算式]
150万(売却額) - 13.75万円(1コインの平均単価@) × 5枚 =
150万(売却額) - 68.75万円(購入資金) =81.25万円
81.25万円利益が所得金額とみなされます。
実際に、ビットコインの売買の事例を見てみましょう。
2月に2,000,000円で4ビットコインを購入
4月に0.2ビットコインを110,000円で売却
6月に155,000円の商品購入に0.3ビットコインを支払い
10月に時価600,000円の他の仮想通貨購入に1ビットコインを支払い
12月に1,600,000円で2ビットコインを購入
[総平均法]
総平均法での1ビットコイン当たりの取得価額は、600,000円となります。
(2,000,000 円+1,600,000 円) ÷ (4BTC+2BTC ) = 600,000 円/BTC
【1年間に取得したBTCの取得総額】 【1年間に取得したBTC】
【仮想通貨税金計算サービス】
このように利益の計算は複雑になりますが、考え方だけ理解していればよく、実際には、仮想通貨税金計算サービスや税金計算アプリを使用します。
2018年1月にリリースされたtax@cryptactは無料の計算サービスです。
また、大手仮想通貨交換所のサイトには、税金計算に利用できるアプリがあります。
取引している仮想通貨交換所が業務提携している、無料の税金計算サービスを利用するのが良いでしょう。
まとめ
仮想通貨で利益が出た場合は、納税義務が発生します。利益が出る場合には、仮想通貨を円に換金した時、仮想通貨で他の仮想通貨を買った時、何らかの商品やサービスの決済に使った時があります。
サラリーマンでは、アフィリエイトの利益など、雑所得に分類される収益と足して20万円を超える場合、確定申告をして納税しなければなりません。仮想通貨の利益は雑所得とみなされ、給与の年収にプラスして総合課税とし、累進課税の税率で納税します。
株や外国為替のような分離課税や損益通算の適用がないこと、税務署が脱税を把握しやすいこと、税金の計算ソフトがあること、法律が今後変わることもあることなどを念頭に、日頃から仮想通貨の管理をして確定申告に備えましょう!