不動産ビジネスが変わる?仮想通貨ブロックチェーンの技術活用!

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不動産業界は、今までIT化が遅れていた分野でしたが、近年ようやく、登記情報が電子化されるなど、合理化が進んできました。

また、レインズと呼ばれる不動産情報システムにより、日本全国の不動産業者が同じ物件情報にアクセスできるようになっています。

しかし、現在の不動産業界の情報システムは、維持管理に多額の費用を必要とし、不動産業界は、中央集権的な組織となっています。

ブロックチェーン技術の活用で、今後不動産業界がどう変わるのか、そのメリットと課題、また、不動産業界の新たなビジネス展開について紹介します。

それでは、まず、ブロックチェーンの技術とは何かから見ていきましょう。

1.ブロックチェーンの技術とは?

ブロックチェーンの技術の最も大きな特徴は、管理者を必要とせず、第三者を介さないで情報の信頼性を検証・承認できることです。

ブロック上で承認された情報は台帳に記録されて、次のブロックへとチェーンのように連なって継承されてゆきます。

ハッシュという暗号技術で、データを書き換えることができない仕組みになっており、他者の意図的な不正な改ざんを防止します。

また、データの一部を書き換えても、過去にさかのぼって全ての情報を書き換えることができない不可逆性に特徴があります。

そして、ネットワーク上のユーザーの端末(ノード)が情報の検証・承認を行い、民主的な組織構造となっています。

ブロックチェーンのメリット

ブロックチェーンの技術を活用すれば、銀行のような中央管理者を必要としないため、検証・認証に必要な人件費を削減できます。

非中央集権的な仕組みであるため、一部の管理者の意向で、急にシステムやルールが変更・操作されることはありません。

また、仲間が共同して管理するオープンなP2P(Peer to Peer)で、誰でも情報を確認することができ、公明正大性が保たれています。

ブロックチェーン上で電子的に取引が検証・承認されるため、個人間で、信頼性の高い取り引きを、簡単・迅速に行えます。

記録された情報は、複数のノードで分散管理されているため、一部の情報が喪失しても、容易に復元することができます。

ブロックチェーン技術の利用

ブロックチェーンは、仮想空間の技術であるにもかかわらず、徐々に社会に受け入れられてきました。

初めてブロックチェーンの技術が使われたのは、2009年の仮想通貨、ビットコインの誕生です。

仮想通貨は若者を中心に、新しい形の資産運用として普及し、その後、プロジェクトの資金調達(ICO)で、様々なコインが発行されます。

イーサリアムのブロックチェーン上では、ゲームやSNSの投げ銭に多くのコインが開発され、NEMなどのアルトコインが発行されます。

そして、ブロックチェーンの利便性が金融機関に認められ、銀行間の国際送金や企業内決済に活用され始めます。

ブロックチェーン技術の新たな適用例

近年では、ビジネスの契約や取引にブロックチェーンの技術が導入され、「スマートコントラクト」の応用が盛んになってきています。

「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上で、契約に基づいた取引を自動化し、管理者不在で契約を実行できる仕組みです。

そして、ブロックチェーンの技術が、産業のあらゆる場面で盛んに活用されるようになりました。

応用の分野は、例えば、

 文書や特許などの履歴管理
 製品やサービスのトレーサビリティ
 日常生活や生産ラインでのIoT対応
 交通やイベントのチケットの販売・管理
 美術品や不動産の資産運用

などがあります。

その中でも、今、特に注目されているのが、土地・建物の不動産(アセット)へのブロックチェーンの活用です。

2. ブロックチェーンを不動産にどう活用するか?

不動産業界は、中央集権的システムで成り立っており、物件情報は大手企業、そして登記情報は行政により管理・運営されています。

不動産取引は、有資格者による店舗営業により、対面で顧客に物件を紹介し、紙の書類に基づいて契約を実行する、手数料ビジネスです。

物件情報は、『レインズ(不動産流通機構)』で管理され、一般の消費者は、その情報を自由に閲覧することはできません。

土地・建物の所有者が直接、レインズに物件情報を掲載して、自分で買い手を見つけて、売買契約を成立させることはできません。

それでは、今後、不動産業界にブロックチェーン技術が導入されることにより、不動産取引はどのように変わるのでしょうか。

ブロックチェーン技術を導入するメリット

不動産を売買するには、売り主・買い主が、不動産業者・司法書士を介し、金融機関や法務局で手続きを行いながら進められていきます。

情報は、企業や行政の縦割り組織で分散管理されているため、契約を成立させるためには、多くの時間と手間と費用がかかります。

今後、ブロックチェーン技術が不動産業界に導入されることにより、

・ 登記手続きの簡易化
・ 物件情報の一元化・安全性・開示性
・ 不動産取引の契約の自動化
・ 不動産のトークン化

などのメリットが期待されます。

登記手続きの簡易化

土地・建物の所有権は、紙の登記簿謄本に記載されて、所在地を管轄する登記所で、登記官により認証を受けることで確定します。

そして、不動産の登記所は、日本政府の法務局によって、中央集権的に管理されています。

登記官は、その土地・建物がどこにあって、どれくらいの広さか、所有者は誰かを正しく判断した上で、コンピュータに登録します。

不動産の売買は、登記官により正しく情報が登録されて初めて、所有権の移転が確定し、取引が安全・確実に行われたことになります。

この登記手続きに「スマートコントラクト」を活用すれば、登記官を介せず、迅速かつ確実に、低コストで所有権の移転登記が可能です。

物件情報の一元化・安全性・開示性

ブロックチェーン技術を導入すれば、レインズなどで管理されている物件情報を一元化して効率的に管理することが可能です。

登録された情報は暗号化され、ブロックチェーンの特徴である不可逆性により、第三者の不正な改ざんから守ることができます。

所有者の情報が安全に管理されるうえ、ブロックチェーンの開示性の特徴で、誰でもいつでも情報を確認することが可能になります。

そして、認証された不動産情報を、低コストで迅速に送受信することができ、不動産売買の流動性が増します。

不動産取引の契約の自動化

前述した「スマートコントラクト」の技術により、契約における書面の押印などの手続きを省き、契約を簡易化することが可能です。

契約条件をブロックチェーン上に記録し、条件に合った取引と認証されれば、契約が自動で実行されて所有権が移転されます。

今まで、宅建業者に売買の仲介を依頼し、行政書士に登記を依頼して、仲介手数料や報酬が発生してものが、自動化で不要になります。

売買契約書や登記所の変更登記に、収入印紙を添付して印税を納付していた、費用や手間を軽減することができます。

「スマートコントラクト」では、売り主と買い主が直接契約し、売買が成立すれば、登記手続きなどの派生的作業も自動化できます。

不動産のトークン化について

不動産業界に仮想通貨の技術を導入することで多くのメリットが期待できますが、その中でも大きなものが、不動産のトークン化です。

不動産物件をトークン化することで、物件情報や権利関係を確実に電子化し、ネットを通して売買や収益の分配が容易になります。

それでは、不動産のトークン化とは一体どういったことなのでしょうか。

トークン(Token)とは?

トークン(Token)とは、日本語で「しるし、証拠、代用貨幣、代用硬貨」などを意味します。

スーパーやコンビニでもらうクーポンや、ネット通販やクレジットカードで貯まるポイントもトークンです。

クーポンやポイントは、利用しなければ価値はありませんが、商品やサービスと交換することで、現金価値が生まれます。

トークンとは、現物資産と交換可能なものを指し、また、円やドルなどの法定通貨で売買できる仮想通貨も、トークンの一種です。

広義に言えば、トークンとは、ブロックチェーンの技術を利用して発行される、仮想のコイン全般を指します。

不動産のトークン化とは?

仮想通貨とトークンの違いですが、仮想通貨は、ビットコインやイーサリアムのように、独自のブロックチェーン上で構築された通貨です。

それに対して、既存のブロックチェーンの動作環境(プラットフォーム)上で開発された通貨が一般にトークンと呼ばれています。

イメージとしては、独自に線路を引いて列車を走らせるのと、敷いてある線路の上を走る電車を作るといった違いでしょうか。

不動産のトークンは、既存のブロックチェーンのプラットフォームで構築されたシステム上で発行されます。

仮想通貨が、発行時点でまだ実体のない仮想の通貨であるのとは異なり、不動産のトークンは実体のある物件に裏付けられています。

不動産のトークン化のメリットとは?

不動産物件がトークン化すれば、会社の価値が株式によって証券取引所で売買されるように、不動産が売買されるようになります。

そうなれば、海外の株式を自宅にいながらネットで購入するように、外国の物件を一般の消費者が、容易に購入することが可能になります。

一部の富裕層しか購入できなかった物件が、公社債投信のように、分散投資という形で少額から購入できるシステムも作れます。

また、ハワイの不動産を買うために、現地に出かけて契約書にサインすることなく、日本にいながら容易に海外の不動産が購入できます。

さらに、不動産の開発会社は、トークンを発行して世界中から資金を調達してから、プロジェクトを実行に移すことも可能です。

3. ブロックチェーン導入の不動産業界の課題

しかしながら、ブロックチェーンの技術を不動産業界に導入するには、まだまだ多くの課題が残されています。

行政の適切な対応や法整備の必要性、不動産業界の利権の壁、災害時を含む危機管理などについてみましょう。

行政の適切な対応と法整備の必要性

不動産取引は多額の資金が動き、売買で不正が行われれば多くの被害が出るため、現在は様々な法規制で消費者は守られています。

ブロックチェーンの技術は世に出てまだ年数も浅く、予測できないリスクもあり、管轄している法務省による現実的な対応が進んでいません。

また、不動産がトークン化されると、証券として課税することになりますが、課税により導入のハードルが高くなります。

そして、売り手と買い手が直接取引をすれば、不動産業者・行政書士・登記所の仕事はなくなり、国も印税などの税収が減ることになります。

行政が、各産業の利害関係を調整しながら適切に対応し、法整備を進めてゆくには、まだまだ時間がかかるようです。

不動産業界の利権の壁

不動産業界は、レインズ(不動産流通機構)で物件情報を管理しながら、仲介手数料でビジネスをしています。

一般消費者が、ブロックチェーン上に情報を開示し、スマートコントラクトで自動契約すれば、不動産業界の役割は減少します。

同様の既得権問題が、現在、金融業界やタクシー業界で起きています。

仮想通貨で安く早く簡単に海外送金できれば、銀行の送金手数料のビジネスが成り立たなくなります。

また、Uber(ウーバー)は、条件が合えば契約が成立し、目的地まで安く利用できるため、従来のタクシー会社は脅威を感じています。

このように、産業界では、既存の利害関係との折り合いをどうするかが、ブロックチェーン技術導入の大きな課題となっています。

電力不足や災害時の対応

ブロックチェーンは、そのトークンが、いくらリアルな不動産と紐付けられたとしても、ネット上のバーチャルなシステムです。

災害で発電所が停止して電力がなくなれば、誰もブロックチェーン上のデータにアクセスすることはできません。

システムに不具合が発生しても、ブロックチェーンの技術を理解して修復できる技術者は、世界の全人口からみてほんのわずかです。

そして、マイホームを買い、長期ローンで返済する一般消費者から見れば、不動産の所有権の電子化には不安が残ります。

また、証券化された不動産が、災害で被害を受けた場合の対応についても、考慮して行かなければなりません。

現実資産のトークン化における課題

トークン化された不動産を、不動産証券として電子的に市場に流通させるためには、金融商品として消費者を守る、新しい法規制が必要です。

近年、仮想通貨のICOで詐欺が横行しましたが、不動産の証券化でも、同様の事態が予想され、不正な販売に対する監視体制が必要です。

マネーロンダリング防止はもとより、データにアクセスする際のセキュリティーのさらなる強化が必要です。

また、実際の不動産の引き渡しや、物件に不具合(瑕疵)があった場合の対応など、課題は多くあります。

さらに、金融界での導入が、真に民主的なシステムではなく、既存機関の合理化に終始するような傾向が、不動産業界にも予想されます。

4. 不動産業界への適用・取組事例

海外では既に、不動産のトークン化による、投資ビジネスが始まっています。

マンハッタンのコンドミニアム建設の適用事例

2019年1月に、アメリカ初の、ニューヨーク・マンハッタンのトークン不動産建設のニュースが報じられました。

証券会社のプロペラー・セキュリティーズが、ブロックチェーン関連会社のフルイディティと組み、不動産プロジェクトを企画しました。

建設予定のコンドミニアムを担保としたトークン(デジタル権利書)を発行し、投資家から約32億円の資金を集めています。

購入した投資家は、将来にわたり、建設されるコンドミニアムの賃料や、権利の売却による収益が期待できます。

建設する側から見れば、銀行からの資金融資に頼らずに、広く一般から短期間で資金調達できるというメリットがあります。

RAX  Mt.Fujiの富士河口湖町ゲストハウスの適用事例

日本でも、2019年11月に、不動産会社のRAXMt.Fujiが、富士河口湖町のゲストハウスをトークン化したことで話題になりました。

宿泊施設の開業支援をする韓国の会社と協力し、外国人観光客に人気が高い富士山が見渡せるエリアの物件をトークン化しました。

ブロックチェーン技術を用いて、権利書を電子的に発行し、ゲストハウスの建設費用を調達するプロジェクトです。

購入者は、ブロックチェーン上で、物件内容・契約書・経費・配当金などの情報をいつでも確認でき、公明正大性が保たれます。

トークンの発行で、取引の透明性と信頼性を確保しながら不動産プロジェクトを展開する、新しいビジネスモデルとして注目されています。

三井住友信託銀行の物件情報開示の取組事例

近年、不正融資が多数発覚したスルガ銀行など、金融機関や不動産業界で、情報管理への信頼性が著しく損なわれていました。

そんな中、三井住友信託銀行が、不動産物件への信用回復のため、賃貸物件方にブロックチェーン技術を導入する実証実験をはじめています。

都心の商業ビルの賃料や管理コスト、空室率をブロックチェーン上に記録して情報を開示し、物件価値の透明性を確保する取組みです。

従来は、これらの情報は自己申告によるもので、一般に公表されている物件の情報管理も、画一化されていませんでした。

全ての管理物件に、今後ブロックチェーンによる情報開示が実現すれば、不動産への信頼が高まり、投資市場の活性化が期待されます。

まとめ

Bitcoinの仮想通貨で世に出現したブロックチェーンの技術は、今やあらゆる産業になくてはならない存在となってきました。

ゲームやサブカルチャーだけでなく、金融部門や製造部門で、ブロックチェーンの果たす役割は多大です。

そして、スマートコントラクトの導入により、真に民主的なシステムの自動化が、産業に新しいビジネスをもたらしつつあります。

不動産のトークン化や、販売システムへのスマートコントラクトの導入は、不動産業界に新しいビジネスのあり方を提示しています。

現存する課題を一つずつクリアしながら、次世代の不動産ビジネスに向けて、今世界の不動産業界は、確実に動き始めています。

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【参考】まもなく海外銀行口座開設の受付